そして俺は、契約妻に恋をする

 フィッティングルームのカーテンを引く音に顔を上げると、きらきらと輝く赤いドレスを着た香乃子が恥ずかしそうに小さく微笑んだ。

「綺麗だ」

 考える間もなく口から出た俺の感想に、彼女は赤く頬を染める。

 ロングイブニングドレスなので、ある程度の露出は仕方がないが、間違っても男を誘っているなどとは思われないよう、横も後ろ姿も確認する。

「あの……派手じゃないですか?」

 ドレスについたスパンコールが、彼女の動きに合わせてきらきらと輝く。

「全然? 上品だしよく君によく似合ってる」

 初めて一緒に来たときは、本人が好きなようにドレスを選べばいいと思っていたが、彼女が選ぶドレスは控え目で、どちらかというと地味なものばかりになってしまう。

 なので『君が主催者ならどう?』と聞いてみた。

『お客様が華やかな服装で来てくれたら、うれしくないか?』

『ああ、言われてみればそうですね』

 それ以来、彼女はドレス選びに俺の意見を聞いてくれるのだ。

「赤とはいっても色は落ち着いているし、大人っぽくていいと思うぞ?」

「そうですね。それじゃ、このドレスにします」

 納得した彼女の後ろに回り、首にネックレスをつけた。

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