そして外交官は、契約妻に恋をする
「束の間の晴れだったな」

 安定の曇天を見上げ思わず笑うと、彼女も「さすがロンドン」と笑った。

「カフェで休んでからテイクアウトを買って、夜は家でのんびりしようか」

 俺が作ってもいいが正直あんまり自信はない。バーベキューならバッチリだが、夜はもう寒すぎる。

「あ、そういえばちょうどこの辺りに、ナオミさんが教えてくれたお店があったかも」

「そうか。じゃあそこに行ってみよう」

「ナオミさん、なんでも詳しくて――」

 明るい声で話す彼女にホッとする。

 親しい友人ができたようでよかった。
 ナオミ・ブラウン。彼女は現地採用職員だ。
 イギリス人と結婚し国籍は英国だが、もともと日本人ゆえに相談しやすいはず。
 香乃子の力になってくれるよう俺からくれぐれも頼んであるが、俺の心配など必要ないくらい二人は気が合うようだ。

 歩きながら手を差し出すと、香乃子は少しはにかみながら右手を重ねる。

 あと、五カ月……。

 もし彼女が一年を目安にしているなら。
 離婚をするつもりなら、残すところあと五カ月しかない。

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