そして外交官は、契約妻に恋をする
「男ふたりでも結構危険な目にあったからな。強盗もだが、部屋に得体の知れない虫がいたり、シャワーから茶色い水がでるとか」
溜め息をついて頬を膨らませる彼女をなだめ、再び歩きだす。その際さり気なくまた手を差しだして彼女の華奢な手と繋ぐのを忘れなかった。
「でも君は運動神経がいいよね。そういえばスポーツはなにかやってた?」
細いヒールのパンプスでも彼女は流れるように美しく歩く。体幹でも鍛えているのか。
「うーん、学生時代はなにも……母と一緒にピラティスとかヨガは通いましたけど」
他愛ない話をしながら歩く。ただそれだけで心が満たされる。
こんな気持ちになるとはな……。
一緒にいるとホッとさせる人柄なんだろう。
『香乃子さんは穏やかでいい子ね。一生懸命でもそれを表に出さずに人を安心させる。本当に素敵な方ね』
大使夫人が彼女をそう褒めていた。『頑張りすぎないように気をつけて上げなきゃだめよ』とも。
俺が彼女に外交官の妻という仕事だなんて言ってしまったせいで、責任感の強い彼女に余計な負担を負わせてしまったのかもしれない。
溜め息をついて頬を膨らませる彼女をなだめ、再び歩きだす。その際さり気なくまた手を差しだして彼女の華奢な手と繋ぐのを忘れなかった。
「でも君は運動神経がいいよね。そういえばスポーツはなにかやってた?」
細いヒールのパンプスでも彼女は流れるように美しく歩く。体幹でも鍛えているのか。
「うーん、学生時代はなにも……母と一緒にピラティスとかヨガは通いましたけど」
他愛ない話をしながら歩く。ただそれだけで心が満たされる。
こんな気持ちになるとはな……。
一緒にいるとホッとさせる人柄なんだろう。
『香乃子さんは穏やかでいい子ね。一生懸命でもそれを表に出さずに人を安心させる。本当に素敵な方ね』
大使夫人が彼女をそう褒めていた。『頑張りすぎないように気をつけて上げなきゃだめよ』とも。
俺が彼女に外交官の妻という仕事だなんて言ってしまったせいで、責任感の強い彼女に余計な負担を負わせてしまったのかもしれない。