そして外交官は、契約妻に恋をする

▽香乃子


▼香乃子



 十二月に入り、ロンドンはすっかりクリスマスモードだ。

 我が家にも大きなクリスマスツリーを飾ってある。

 実家では父がこういうイベントを嫌ったせいでツリーはなかった。食事だけはターキーやケーキが出てきたけれど、そういえばクリスマスプレゼントは母や家政婦さんからしかもらわなかった。

 真司さんの家は違ったらしい。

 このツリーみたいに子どもの背丈はあるクリスマスツリーがリビングに置かれていたそうだ。

 男の子だからかあまり興味はなさそうだったが。

「あ、また増えてる」

 シャワーから出てきた真司さんが、スノーボールを指先でつつく。揺れたボールの中の雪だるまが舞い上がった雪に覆われる。

「かわいくてついつい」

 子どもの頃の憧れからか、こんなふうに飾れるのがうれしくて堪らないのだ。

「なあ香乃子、一拍で旅行にいかないか?」

「旅行?」

「ああ。コッツウォルズのヴィラが借りられそうなんだ。急だけどあさっての休みに、どう?」

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