そして外交官は、契約妻に恋をする
 パーティがあるわけじゃないので、セーターにコートを羽織り、ボトムスはジーンズにブーツというスタイル。真司さんもほぼ同じ。違うのはセーターの色とブーツの長さくらいか。彼はショートブーツだ。

 真司さんは白いタートルネックのセーターにグレーのコート。私は深紅とまではいかないけれど赤いセーター。お互いに似合うと言った色を着て「紅白でめでたいな」と笑い合う。

 でも彼は本当に素敵だ。

 こんなに素敵な人が、期間限定とはいえ自分の夫だなんて夢を見ているみたい。幸せ溢れるロンドンの夢。

「今夜の料理は任せてくれ」

「おおー。頼もしい」

 パチパチと拍手をして、早くも気分は最好調。

 途中スーパーに寄って食材を買い込んだ。今夜と言わず、食事の用意はすべて真司さんがしてくれるらしい。

 秘密だと彼は言うけれど、魚介類にニンニクにサフランとくれば、察するにパエリヤか。ローストビーフは朝食のバゲットに挟むのかもしれない。ローズマリーは根菜類と鶏肉はグリルかな?

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