そして外交官は、契約妻に恋をする
 たとえ失敗しても彼が作ってくれたものなら美味しいに違いない。わくわくする気持ちが魔法のスパイスになるから。

「飲み物はどうする? シャンパンと……モルドワインはどう?」

「いいですねー。そうしましょう」

 モルドワイン。ロンドンに来るまでは私はホットワインと言っていた。ワインにフルーツや香辛料を入れて温める。体の芯から温めてくれる冬の定番ドリンクだ。

「じゃあワインに合わせるスパイスは君に任せよう」

「はーい」

 柑橘類のフルーツのほかにシナモンと、クローブとドライフルーツをいくつか。そしてハチミツも。

 興味深そうな彼に簡単に説明する。シナモンは体を温めてくれて胃腸を整え、クローブは消化を促して鎮痛・抗菌そして抗酸化の作用がある。

「なるほどなぁ」

 逐一関心を示してくれるので、彼と話しをするのは楽しい。実家では誰も私の話に興味は示さなかったから余計に。うれしくて心が温かくなる。

 買い物も終わり話をしているうちに目的地コッツウォルズに着いた。

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