そして外交官は、契約妻に恋をする


▼香乃子

 楽しかった一泊旅行はあっという間に終わり、浮かれ気分に活を入れるように忙しい日常が戻ってきた。

 今日は、大使夫人のお手伝いでショッピングに行った。ショッピングと言ってもただの買い物じゃない。お客様に渡す手みやげの調達で、もちろん日本のもの。お客様が自分でも手に入れられるように街中で見つけようということになったのだ。

 無事、青森のリンゴに決まりホッとしたところで夕食の準備をしていると、真司さんが帰ってきた。珍しく早い。

「隙をみて帰ってきたよ」

 お疲れのようで、溜め息をつく。

「母が突然こっちに来ることになって」

「えっ? お義母様が?」

「ああ、飛行機のチケットが取れたらしくて、友人の娘さんと一緒に来るらしい。いきなり案内よろしくとか、呆れるよ。それでなくても忙しいのに」

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