そして俺は、契約妻に恋をする
 対して私はといえば、モデル体形でもなく、彼のように華があるわけでもない。大衆に馴染む存在感が薄い私が、あんな神がかった人の隣に並んでもいいのだろうか。

 私は物心付いたときから、結婚は親が決めた通り、政略結婚だと言われてきた。

 これまでの人生もすべて父に言われた通り、決められたレールを進んでいる。小学校から大学まで一貫校の女子校。門限も厳しく恋をする機会も意図的に奪われてきたと言っていい。大学選択のとき、思い切って希望を告げてみたが、父は聞く耳を持たなかった。

 社会人になったとはいえ、就職先は父が代表を務めるグループ傘下だし、仕事を夢中でこなすうちに今日まできてしまった。

 政略結婚は仕方がないとしても、せめて恋くらいしてみたかったのに。

 ささやかな私の夢は塵と消えるのか……。

 しかも、あんなパーフェクトヒューマンと。

 実感がなくて、自分のことなのによその話のように感じてしまう。

 彼はどうなんだろう。なんの抵抗もないのかな?

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