そして外交官は、契約妻に恋をする
「日本らしいお土産を持ってきましたの。お仕事の足しにでもなるといいのですけれど」

 李花さんはそう言って、艶めく長い黒髪を耳にかけバッグに手を伸ばす。

 抜けるように白い肌、切れ長の目もとをしたハッとするような美人だ。和柄を思わせる濃紺のワンピースもよく似合っていて、空港でも男性のみならず女性の目も惹きつけていた。

 ティーカップを置きながら目にすると、テーブルに並べられた土産物は、茶道では必需品の和紙の懐紙や、あぶらとり紙、こけしのキーホルダーなど、綺麗で気が利いたものばかり。

「ありがとう」

 真司さんが礼を言い、お義母さまが「素敵ね」と絶賛した。



 そして三日後。

 ロンドン滞在を終えて彼女たちは次の観光地パリに向かった。

 空港での見送りを済ませると、真司さんがホッとしたように溜め息をつく。

「本当にありがとう、助かったよ。ふたりとも喜んでいた」

「そうだといいんですけど」

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