そして外交官は、契約妻に恋をする
 朝になっても起きてこない私を心配して、真司さんが寝室に様子を見にきてくれた。

 そのときまで気づかず夢の中にいた私は、うなされていたらしい。

「いや、いいんだ。そのまま寝てて。きっと疲れたんだろう。お昼に様子を見に来るからそのときの様子で病院に行こう」

「はい」

 一応返事はしたが、後でお昼は戻らなくても大丈夫だと連絡を入れよう。今日も今日とて彼は忙しいのだ。私に時間を使わせては申し訳ない。

 本当なら今夜は私も出席するはずのレセプションがあるのに、この状態では無理だ。がんばらなきゃと思うのに、体温計を見ると熱はしっかりあって悲しくなる。

 真司さん、優しいな……。

 実家で私が熱を出しても、家族は冷ややかだった。

 心配するどころか自己管理がなってないと叱られて。私はそれが嫌で、無理をして学校に行き、結局つらくて保健室で休ませてもらったこともある。

 体調を崩さないよう細心の注意を払い、いつしか風邪もひかなくなっていた。

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