そして俺は、契約妻に恋をする
 郷にいっては郷に従え。

「アロマ、喉がとっても気持ちいです」

 加湿器からアロマの爽やかな香りがしている。喉に効くエッセンシャルオイルを入れてくれたようだ。

「よかった。皆に教えてもらったんだよ。なにをどうすればいいかわからなくて」

「そうだったんですね」

「夕食は鶏肉のシチューにしようと思うんだ。問題は果たして俺にできるかどうかだけど」

 彼は苦笑を浮かべるが、美味しいに決まっている。パエリアもだが、彼が作ってくれたものはどれもこれも美味しかったから。

「とっても楽しみです」

「味の保証はしないぞ?」と彼が笑う。

「私がフルーツが好きだって気づいていたんですね」

 彼は「もちろんさ」としたり顔だ。でも私はそんな話をした記憶がない。

「だって君は本当にうれしそうにフルーツを食べるからね」

「えっ、そんなにわかりやすかったですか?」

 あははと笑う彼は「毎日一緒にいるんだぞ?」と、肩をすくめる。

「毎日なにかしらのフルーツを食べてるだろ?」

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