そして俺は、契約妻に恋をする
　それもそうだ。好きじゃなきゃ毎日は食べない。

「真司さん、奈良漬けを好きだったんですね」

「あー、あれか。一ノ関さんの親戚で作っているとかで、よく母がもらってくるんだ。好きっていうか、家族では俺しか食べなくて。奈良漬けを見るとまた俺が食べるしかないのかってね。思わず苦笑いしたわけさ」

　苦笑い？　そうだったの？

「じゃあ、特別好きというわけではないんですか？」

「まぁなんというか、一年に一回くらいは食べてみたいかなっていう程度かな」

「なんとなくわかるかも。私もたまに思い出したようにワサビ漬けが食べたくなる」

　真司さんはピンと指を立てて「それだ！」とうなずいた。

「ワサビ漬けもそうそう。たまーに食べたくなる。うんうん」

　なるほどと納得し合い、それからはお互いに好きな食べ物の話になった。

　真司さんは、意外にも庶民的に鶏の唐揚げが好きだと知った。フライドチキンとはまた違って醤油の風味がする唐揚げがいいらしい。

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