そして俺は、契約妻に恋をする
「いつだったか、ホームパーティで君が作って絶賛されていただろう? あれは本当に美味しかったよ」

 てっきりお世辞だと思っていたのに、本当に気に入ってくれていたなんて。

「じゃあ、元気になったらまた作りますね」

「ああ、よろしく頼む」

 そんな話をしながら、ヨーグルトやフルーツを食べ終わるまで、彼は椅子をベッドの脇に移動させてずっと寄り添っていてくれた。

 彼が部屋を出て、私は用意してくれたお湯を使って体を拭き、着替えて布団に潜り込む。

 目をつむると、ときおりキッチンから音が聞こえてくる。カチャカチャと響くたびに、扉の向こうにいる彼を感じ胸がほっこりと温かくなる。

 幸せだな、と思った。

 私は今、とても幸せだ。




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