そして俺は、契約妻に恋をする

▽真司


▼真司



「神宮寺さん、香乃子さんの具合はどうですか?」

「ありがとう。もう大丈夫そうだ。ナオミさんに教えてもらったシチュー、無事喜んでもらえたよ、サンキュー」

「それはよかったです」

 寝込んだ香乃子になにをしてあげたらいいか。彼女と仲のいいナオミさんに相談し、いろいろと教えてもらった。

「一番の薬は寄り添ってあげることですからね。忘れないでくださいよ」

 笑って礼を言い、自分の席に向かう。

 香乃子は母たちの付き添いで相当疲れたに違いない。

 母の話ではまるで一流の添乗員のように、気を遣って案内してくれたようだ。

 レストランの座席ひとつをとっても店員と交渉し、景色がよく見える場所に移動させてもらったり、好き嫌いのある一ノ関李花のために細かく材料や味を聞いてくれたという。

 ただ、李花の毛皮の件については、母は『どうして香乃子さんは前もって教えてくれなかったのかしら』と憤っていた。

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