そして俺は、契約妻に恋をする
 だが母は、俺が思っている以上に彼女と親密なようだ。

『どうして李花さんと来たんだ。彼女の母親と来るはずだっただろう?』

『いいじゃないの別に。お母様が都合が悪くなったのよ。真司だって李花さんを気に入っているくせに』

『はあ? なんでそうなるんだ』

 いったいどういうつもりなんだか。

 もしかして、李花となにかあったのか?

 母もいるからまさかとは思うが。やれやれと溜め息をついたところでスマートフォンが音を立てた。表示は母からである。

『真司、あと一日だけ李花ちゃんに付き合ってくれないかしら』

「え? どういうこと?」

 母と李花は今パリにいる。だが、李花がどうしてもロンドンで買って帰りたいものがあるから、ひとりでロンドンまで来るというのだ。

 その間母はパリの友人と過ごし、パリで李花の戻りを待つのだそうだ。

「そんな勝手な」

< 77 / 236 >

この作品をシェア

pagetop