そして俺は、契約妻に恋をする
「まだ熱はありそうですけど、どうですか?」

「正直に言うと、ちょっとつらい」

「はい。正直でよかったです」

 彼は力ない笑顔で笑う。

「食欲はありますか?」

「うーん、今はあんまり」

「わかりました。ちょっと待っていてくださいね」

 急いでキッチンに行き、冷蔵庫からすりおろしリンゴを取り出し、生姜とハチミツを入れてお湯を注ぐ。最後に、輪切りのレモンを入れて。

 寝室に戻り真司さんにカップを渡す。

「すりおろしリンゴがたっぷり入っているんです。飲むとホッとすると思いますよ」

「へえ、すりおろしリンゴか。ありがとう」

「着替えを出しておきますね」

「ああ、ありがとう」

 真司さんのクローゼットは今まで開けたことはなかった。

 洗濯は私がするが、畳んで彼の部屋に置くまでしかしない。なので、今朝どこにパジャマがあるか聞いたのだ。開けてみると同じ引き出しの中に下着もあったので、下着のありかは聞かずに済んだ。

「美味しいな」

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