そして俺は、契約妻に恋をする
 枕元に着替え一式を置くと、彼はタンブラーを持ったまましみじみと溜め息をつく。

「体力には自信があったのに。熱を出したのなんて記憶にないくらい昔なんだがなぁ」

「ロンドンは乾燥してますからね。口にするものも違うし、体が悲鳴をあげているんですよ」

「悲鳴か」

「ええ」とうなずく。きっとこの前の私と同じだ。というか、彼は私の何倍も大変な日々を過ごしている。

 ロボットだって電池が切れれば動けない。ましてや血の通った人間だもの、過労なら倒れて当然だ。

「とにかくゆったりと寝てくださいね。ときどき様子を見にきますから」

 疲れさせちゃいけないので、空いたカップを受け取り部屋を出る。

 扉を閉めようとすると「サンキュー」と聞こえた。

 振り返って真司さんを見ると、彼はにっこりと微笑んでいる。少しやつれてはいるものの明るい表情に、ホッと胸をなで下ろす。

 彼はこのところ予定のない休みがなかった。

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