そして外交官は、契約妻に恋をする
 前の晩はレセプションで帰りが遅かったのに、彼は朝早くから李花さんを迎えに行った。

 大使館から呼び出されて私と交代する午後三時すぎまでずっと。もし、私に頼んでくれていたなら真司さんはゆっくり休めただろうに。

『真司さん、私がご案内しましょうか?』

『いや、大丈夫。君は病み上がりなんだし、今回は俺が彼女に付き合うよ』

 私はもうすっかり元気だった。正直李花さんと二人きりででかけるのは不安ではあったけれど、真司さんが疲れているのは知っていたから。でも――。

 考え込んでしまいそうになり、ペシペシと頬を叩く。

「さて、作り始めよう」

 うじうじしていても仕方がない。今は真司さんの妻として、精一杯がんばるだけだ。

 サムゲタンを作ろうと思っている。高麗人参となつめは買ってきた。お米ににんにく、しょうが、香辛料の数々。丸鶏を扱うにはちょっと自信がないので骨付きのモモ肉で。

 韓国では滋養食としてサムゲタンを夏に食べるそうだ。高麗人参もナツメも滋養強壮に効く。

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