そして俺は、契約妻に恋をする
　真司さんと交代した後、空港で李花さんに言われた言葉を思い出す。

『あなたはあくまでも、真司さんの一時的な妻にすぎないのだから、勘違いしないでね』

　ハッとした。

　私は真司さんに一年でいいと言われていたが、それは二人の間だけの秘密だと思っていた。

　まさか彼女が知っているとは思わず、動揺して何も言えずにいると彼女は続けた。

『私は生け花の活動があって、どうしても今年はイギリスには彼について行けないから、代わりにあなたを連れて来ただけなのよ。わかっていると思うけど、赴任期間が終わって東京に帰ったら、あなたと離婚して私たちは一緒になるの。私も彼もその日を楽しみにしてるのよ』

　彼女は左手の薬指に光る指輪を私に見せた。

『私が不安だって言ったら、真司さんがね、買ってくれたの。約束の指輪』

　キラキラと光る小さいダイヤモンドがハートの形を作る指輪だった。

　疲れていても無理をして彼女に付き合ったのは、そういう理由があったから。

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