そして俺は、契約妻に恋をする

▽真司



▼真司



 まったく……。

 今度こそ香乃子を誘おうと思っていた休日、バス事故が起きた。仮眠しか取れなかったし、体力に限界がきていたのは仕方がない。

 だがよりによってクリスマスに寝込むとは。

 帰れない間、食事はすべて提供されていたから香乃子の料理は食べられなかった。

 だが、着替えと一緒に持って来てくれたのは彼女の手作りキャラメルだった。

【がんばってくださいね。
 キャラメルを作ってみましたのでどうぞ】

 メモと一緒にひとつずつ包まれていたキャラメルが入っていた。

 さっそく口に放り込むと、程よい甘さと優しいミルクの風味が口の中に広がって。心から美味しいと思った。キャラメルを口にしたのは子どもの頃以来だ。

 一緒にコーヒーを飲むと旨さが倍になった。

 キャラメルがあんなに美味いなんて俺は知らなかったよ。

 香乃子、君は本当に……。

 微笑む彼女を瞼の裏に描き、幸せが心を満たすうち、いつの間にか眠りについていた。






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