そして俺は、契約妻に恋をする
 クリスマスケーキは作るつもりだ。イギリスでは日本のようなスポンジとクリームで作ったデコレーションケーキではなくて、ドライフルーツたっぷりのケーキを焼く。それでロンドンのクリスマスの思い出にすればいい。

 と、思っていたのに彼は、驚異の回復力を見せた。

「おはよう」

「おはようございます。随分元気そうですね」

 思わずそう言ってしまうほど顔色もよく、声の張りもある。

 しかもすでにシャワーを浴びたようで、濡れ髪をタオルで乾かしていた。

「早くに目が覚めちゃって、すっかり元気だ。サムゲタンのおかげかな」

「おお、さすがサムゲタン」

 あははと笑い合う。

 出掛けようかと本人は平気そうに言うが、空はどんよりと暗く今にも雪が降りそうだ。病み上がりの彼を連れ出すなんて私のほうが気が気じゃない。

 結局、料理は家にあるもので作るということになっだ。

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