そして外交官は、契約妻に恋をする
 でも人付き合いは違う。人と話すことは働いていたときに随分鍛えられたが、もとから社交的だったわけではないので随分努力が必要だった。

〝桜井家のお嬢様はいいわよね。就職試験もなくて顔パスだもの〟

 成功は当然で、失敗すれば桜井家の恥になる。だから人の何倍も努力してきたつもりだ。

 その頑張りが今の彼の一言で報われた気がした。

「人付き合いは、そう言ってもらえるとうれしいです」

「君は本当に素直だな」

 ハッとして振り向くと、彼はにっこりと微笑む。

「君のことだから沢山努力したんだろうが、それ以前に君のその人柄のよさの賜物だよ」

 予想外の言葉に動揺し目が泳ぐ。

 たとえお世辞だとしても、うれしくて胸が熱くなる。

「さあ、飲んで飲んで。明日も休みだからなにも気にせず酔っ払おう」

「そうですね」

「俺たちのクリスマスに乾杯!」

 グラスを掲げて、満面の笑みでチンと鳴らす。

 美味しい料理に彼の笑顔。それだけで私の心は幸せいっぱいだ。

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