そして外交官は、契約妻に恋をする
 食事の後は摘まみを残してワインを飲みながら、二人並んでコメディ映画を見て大笑いをした。

「香乃子、なんでもいいから欲しいものはないか?」

「欲しいもの?」

「本当は俺がクリスマスにターキーを焼いて、君にアクセサリーのひとつもプレゼントするつもりだったんだ。せっかくなら君が欲しいものをプレゼントしたいし」

「そうですね」

 考え込む私に真司さんは体ごと向き直る。

「さあ、俺をサンタクロースだと思って」

 私が欲しいもの……。それはひとつしか浮かばない。

「真司さん」

 間接照明とツリーの電飾だけが光るリビング。彼の瞳を見つめ返すと、星のようにキラキラと輝いている。

 吸い込まれるように近づいて、自分から彼の唇にそっとキスをした。

「私を、抱いてくれませんか?」

 一度だけでいい。私の願いを拒まずに聞いて欲しい。

 彼は私の頬に長い指をかけて、ふっと微笑んだ。

「いいのか? でも、それじゃまるで俺の願いじゃないか」

 彼はやっぱり優しい人だ。

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