そして外交官は、契約妻に恋をする

 そして年が明け――。

 大使館の休みを利用して日本に一時帰国をした。

 結婚してすぐにロンドンに向かった私たちには東京に家がない。まっすぐホテルに向かった。

 私たちの住民票は神宮寺の実家になっているので、てっきり神宮寺家で過ごすと思っていたら、彼がそれでは気を使うからとホテルをとってくれたのだ。

 とはいえ四日しかいられずまたロンドンに戻るので、のんびりホテルで過ごす時間はない。それぞれの家にお正月の挨拶を済ませるのだけで精一杯だ。

 神宮寺家には大晦日と元旦に行った。

 私の実家に行ったのは二日。真司さんが私をとても褒めてくれたおかげで『お前もようやく我が家の役にたてたな』と、父はご満悦だった。

 私には父に褒められた記憶がない。できて普通、できなければ叱られる。それが当然だったから。

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