そして外交官は、契約妻に恋をする
 真司さんとの結婚が決まったときに『香乃子、よくやった』と、初めて褒められた。今回で二度目になるが、それほど真司さんとの結婚は父にとって重要な意味があるのだろう。

 神宮寺のご両親は温かく迎えてくれたけれど、なんとなくお義母様には距離を置かれている感じがした。

 もしかしたらお義母様は私たちが一年限りの契約結婚だと知っているのかもしれない。

『香乃子、君は俺の愛する妻だ』

 二人だけの一日遅いクリスマスパーティーで、彼は私にそう囁いてくれたけれど、あれは彼の優しさだ。

 私たちはあくまでも期間限定夫婦。

 でも、彼は私をちゃんと愛してくれた。私がこの結婚を幸せだったと思えるように……。だから私は大丈夫と自分に言い聞かせる。

 心の中で父に謝った。

 お父さん、私はやっぱりお父さんの期待に応えられないみたい。不出来な娘で、ごめんなさい。

「本当に落ち着かないうちに終わってしまったな」

 彼がやれやれと溜め息をつく。

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