副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜
「ダメです。荒木さんからも『また無茶しそうなので、見張りをお願いします』って言われましたし。念のため、次回の受診が終わってからにしましょう」

「そんな……やっと澪を抱けると思ったのに……やっぱり大成のこと、この間もっとシメておけばよかったかな」

「そんな怖いこと言わないでくださいっ! 」


飛鳥さんとはついつい甘い雰囲気になってしまうけれど、喧嘩になってしまった時のことを解消しなければと決心する。ご飯も食べ終わったので、ソファに座ってゆっくり話すことにした。


「この間の電話で私が何に怒ったかというと、椿さんとの関係を『そんな話』って飛鳥さんが言ったことなんです。飛鳥さんにとっては大したことがなくても、私にとっては大した話だったんです」

「そうか……それは、悪かった」


飛鳥さんがしょぼんとする。でも、話を続けた。


「椿さんと付き合っていて、結婚の話も出ていたんですか?」

「いや、正確には、表向きには付き合っていることにした、だな」

「え、どういうことですか?」

「俺の親も麗香の親も、早く結婚しろとうるさくて、それなら幼馴染同士でちょうど良いじゃないかって俺らに白羽の矢が立ったんだよな。まぁ、事業的にプラスになることも考えたんだろうけど。

 俺はまだ仕事も頑張り時だし、澪のことも忘れられなくて、麗香は麗香で意中の男がアメリカにいたから、表向きには付き合っていることにして親達を黙らせることにした」

「そうだったんですね…」


愛し合っていた2人が結婚の話までしていたのだったら、何で私に偽装婚約を提案したんだろう……と、引っかかっていた。けど、そういう訳じゃなかったのか。


「あと、探偵がついている件を言わなかったのは、写真が出回る前はまだ確証が無かったのと、俺も大成も側にいないのに澪に不安を煽るのは避けたいと思った」

「そういうことだったんですね……」
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