副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜

「とはいえ、ちゃんと伝えておいた方が良かったな。反省した。本当に悪かった」


飛鳥さんが深々と頭を下げた。
そして突然顔を上げたかと思うと、ニヤリと揶揄うような顔をこちらに向ける。


「……で? 澪、やきもち焼いてくれたの?」

「うっ……はい、焼きました」


素直にそう伝えると、飛鳥さんは嬉しそうな顔をしている。そして、突然思い出したかのように、飛鳥さんは別の話題を話し始めた。


「そういえば、澪と竹田は何であんな写真撮られちゃったの? 竹田が一方的に抱きしめてるように見えたけど」

「それが……ゲストからのお土産を渡したいというのと、飛鳥さんのことで話したいことがあるって言われて、ご飯に行ったんですよね。それが椿さんのことだったんですけど。
 その帰り道に、酔った竹田さんに『前から好きでした』って告白されました…」

「そうか、それは……上書きしないとな」


そう言って、飛鳥さんにぎゅぅっと抱きしめられる。そして優しく頭を撫でられた。飛鳥さんの存在が近くに感じられて、ドクンドクンと鼓動が早くなった。


「……澪は誰にも、渡さない」

「飛鳥さん…ごめんなさい、私に隙があったからですね」

「そうだな、澪は仕事ではしっかりしてるけど、ちょっと抜けてる所もあるからな。今回の件は、お仕置きだな」

「へっ!?」


飛鳥さんがニヤリと笑ってこちらを見る。
何を悪だくみしているんだろう……と少し、いや、かなり心配になってきた。

その日はお互いゆっくりマンションで過ごし、夜もいつも通り各自の寝室で眠りについた。次の日の日曜日は私も仕事だったので、忙しく過ごしていた。

そんなすっかり忘れた頃に、飛鳥さんの「お仕置き」が待っていたのだった。


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