副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜
「飛鳥さん、無事検査も問題なくて良かったですね!」

「あぁ、まだ解決していないことは山積みなんだが、これでやっといつも通り過ごせそうだよ。澪、心配かけてごめんな」


飛鳥さんが優しく微笑む。
仕事も終わり、明日から久しぶりの連休だ。

今日は日勤だったので、飛鳥さんと一緒に夜ご飯を食べた。そして、今はソファに2人並んでお茶を飲みつつ、検査結果について話しているところだった。

今週、飛鳥さんは仕事の量をセーブしつつ、念の為脳の再検査も受けた。

そして検査の結果、異常が無いことが分かった。本当に何も無くて良かった。

 
「でも、バイクに乗っていた方は大丈夫でしたかね? その方も心配ですね…」

「大成が福岡で残りの仕事をこなしつつ、見舞いに行ってくれたんだ。それで、やっと話が出来たらしいんだけど、どうやら途中でブレーキの効きがおかしいことに気づいたらしい。
 ……ちゃんと点検もしていたのに、急になぜか。俺が歩いてくるのが見えて、何とか無理やり避けたと言っていたそうだ」

「そうなんですね、でも、どうしてブレーキがそんな急に……」


また自分の見えない所で何かが動いているようで、暗い気持ちになってしまう。飛鳥さんが「澪」と名前を呼んだ。


「その辺りはこっちでも調べてるから、気にしなくて大丈夫だ。で、この間竹田に抱き締められた件、お仕置きされる準備は出来てる?」

「お、お仕置き!?!」

 
びっくりして声が裏返ってしまった。その様子を見て、飛鳥さんが「ククク」と笑っている。

飛鳥さんがじりじりと距離を縮めてくる。でも、私もじりじりと飛鳥さんと反対方向に、並行移動してしまう。
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