副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜
突然やってきたお客様
目の端に柔らかい光を感じ、飛鳥さんの腕の中で目を覚ました。
「う、腰痛い……」
ズキズキする腰が、少し前まで体を重ねていたことを彷彿とさせる。飛鳥さんはというと、スースー寝息を立てて寝ていた。
明け方まで起きていたので、目が覚めたのはもうお昼前だった。
(起きたらきっとお腹が空くだろうな…)と思い、ご飯を準備することにした。
腰を押さえながらそっとベッドを抜け出して、キッチンの前に立つ。パンやベーコンを焼いて、スクランブルエッグも作った。買っておいた果物も添える。
「……澪、おはよう」
寝起きの飛鳥さんがリビングに現れた。
大体の料理が揃った所だったので、手を止めて飛鳥さんを迎え入れる。
「飛鳥さん、おはようございます!」
「ご飯用意してくれたのか、ありがとう。嬉しい」
そう言って手を伸ばして、私をぎゅっと抱きしめた。そうだ、寝起きの飛鳥さんは甘えん坊だった…。
昨夜一線を超えて、飛鳥さんの目線や態度がより一層甘くなっているように感じた。
一緒にいるだけで、ふやけてしまいそうだ。
「飛鳥さん、朝から溶けそうです」
「え? もっとしたいって?」
「そんなこと言ってません!!」
「はは」と笑いながら席に着く飛鳥さん。一緒にご飯を食べて、午後はのんびり過ごした。
と言っても、飛鳥さんは仕事が溜まっているらしく、合間に仕事をしながら、私がスーパーに食材を買いに行くと言うと一緒についてきてくれた。
休みの日の夜は、飛鳥さんと同じベッドで寝るようになった。ぎゅっと抱きしめられるだけで、今までぽっかり空いていた心の穴が埋まるような気がした。
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