副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜

連休明けは、また早番からスタートだ。
飛鳥さんの腕の中が名残惜しいけれど、朝5時に目覚めてそっとベッドを抜け出す。

その後はいつも通りホテルに出勤し、仕事をこなしていった。

最近は私と飛鳥さんの噂も徐々に収まってきて、とあるベルの社員が年の離れたベルキャプテンと付き合っているという噂で持ちきりだった。

今日チェックインするゲストの中に、対応注意ゲストがいないか確認し、特段変わったことはなさそうと安堵する。そんな時、突然フロントから電話が鳴った。

 
ーーープルルッ

「はい、客室課 倉田です」

「お疲れ様です、玉井です。澪、今日早番なんだね!今オーダーお願いしても大丈夫?」

「うん、大丈夫だよ。気遣いありがとう」

「それじゃあ1206のお客様なんだけど、昨日の夜寝苦しかったらしくて、枕を変えられないか?っておっしゃってて。こういう時にちょうど良いもの、ありそう?」

「寝苦しい、か。硬いのが良ければテンピュール枕を持っていくけど、通気性だったらそばがらの枕だね。1206に持っていってみるよ」

「澪、ありがとう!お部屋にこれから持っていく旨、お電話しておくね」


玉ちゃんとの電話を終話する。そばがら枕に枕カバーをつけて、客室に向かおうとしている時だった。


「お、倉田おつかれ〜」

「あれ、庄司さん。お疲れ様です。今日は出勤早いんですね!」

「俺だってちゃんと仕事してるんだぞー というか倉田、今日なんか色っぽいね。良いことあった?」
< 105 / 160 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop