副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜

「そうなんですね…先日、副社長が事故に遭ったのも福岡ですね。何か関係があるのでしょうか」

うーん、と考え始める。でも、情報が少な過ぎて見当がつかない。すると、庄司さんがいつもなら言わないことを言い出した。


「そろそろ遅番で平が来るだろう? 倉田、今日はもう上がっていいぞ」

「え?!でも、仕事は……」

「今日インスペクターで入ってる高橋にゲストランナー手伝わせるから」

「え、じゃあインスペクター業務はどうするんですか??」

「俺がやる」

「え!? 庄司さんが??」


庄司さんももちろん業務は全て対応できるはずだが、最近は支配人業務の方が忙しくて現場に入ることは滅多にない。突然の病欠や忌引き、若しくは何か緊急のことがあった時くらいだ。


「私、まだ仕事できますよ?」

「そんなショッキングなこと聞かされて、通常の判断できないだろ? ま、俺もまだまだ現役だし〜」

そう言ってピースサインをする庄司さん。
あぁ、この人の部下で良かったな、と思う。ここは庄司さんの優しさに甘えさせてもらおう。
 

「じゃあお言葉に甘えて、早退させていただきますね」
 
「おぅ、副社長に目一杯、愛されろよ〜っ」

「変態上司……」


さっきの『あぁ、この人の部下で良かったな』と思ったことは、早速撤回しよう……。


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