副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜
200X年11月22日
今日は清香との結婚記念日だ。ささやかながら、家族みんなでホテル・ザ・クラウンのレストランでコース料理を堪能した。こういう時、社員割引があるのは有り難い。
澪はホテルでかくれんぼをして、迷ってしまった。七瀬社長のお孫さんで、副社長のお子さんである飛鳥くんが助けてくれた。
彼のような利発な男と、娘が結婚してくれたら安心して預けられるのに……と思ったが、やっぱり可愛い娘はまだ当分嫁にはやらない。
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まだまだ読めていない部分も多いが、少し読んだだけでもぼろぼろと泣きながら読んでいた。でも、心にぽっかり穴が空くというより、じわじわと満たされるような感覚だった。
(こんなに愛されてたんだ……)
改めて気づかされたその瞬間、嗚咽になって止めどなく感情が溢れ出てくる。
それはもう、温かい涙だった。
いつの間にか外は暗くなりかけていて、薄暗いリビングで読んでいたことに気が付いた。
電気をつけようと、立ち上がった時だった。ガチャガチャと扉が開く音がした。
「……澪、いるのか?」
飛鳥さんがパチンと電気をつける。
そこに立っている私は目を真っ赤に腫らして、泣いている訳で。飛鳥さんの驚きは、それはすごいものだった。
「澪!?! 何かあったのか!?」
私の側に急いで駆け寄る。そして顔を覗き込むようにして、私の様子を確かめた。その優しい目は、私の記憶で一番古い、当時の飛鳥さんと全く変わらなくて。
見た目は成長と共に随分変わったが、その目で気づいてもおかしくない。むしろ、なんで今まで気づかなかったんだろう?