副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜
「ふふ、飛鳥さんのためにも、お父さんの分も、長生きしないとですね」


飛鳥さんと目が合い、優しい笑みが向けられる。


「……水嶋専務も、権力やお金に執着しているのを見ると……何か大きなものを失ったのでしょうか。それで、何かに縋らずにはいられないのかな、と。今後、水嶋専務はどうなるのでしょうか?」

「そうだな。実はもうその辺りも見当がついてるんだが……澪にも近いうちに、全て話せるよ。
 あと、これまで水嶋専務について調べた内容は、次回の取締役会に持って行こうと思ってる。この件は誰にも言っちゃだめだぞ?」

「はい、もちろんです。誰にも言いません」

「ありがとう。それに、今まで水嶋専務について調べてきたけど、澪の話を聞いて全部一本の線で繋がったというか……確信に変わったよ。教えてくれてありがとうな」

「そうですか……少しでも飛鳥さんのお役に立てていれば、嬉しいです」


日記を開いた時は『水嶋専務に繋がる何かが書いてあるかも知れない。父の死の真相も知りたい』、そう思って見始めたものの、書いてある情報だけでは何も得られなかった気がする。

でも、今日の一連の出来事を飛鳥さんに伝えたことで、何かしら確信に繋がったのであれば嬉しい。


「あ、澪は明日も早番だろう? 何かご飯を食べて、早めにベッドに行こう。日記の内容とかもっと聞いてもいい?」

「はい。飛鳥さんとの出会いも思い出したので、後でゆっくりお話ししましょ?」

「そうか、思い出してくれたのか……」


そう言うと、再び飛鳥さんは優しい微笑みをこちらに向けた。2人で晩御飯を食べて、それぞれお風呂にも入り、寝る準備をした。そして、今日も飛鳥さんの寝室に向かう。


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