副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜
「いえ、私も流石にあーくん呼びは……なんか、バカップル感がすごいです」
「そう言われると、あーくんもありかも?」
「だめです」
ちぇっと言っていると、澪に「飛鳥さん、子供みたいで可愛い」と撫でられる。
子供扱いしやがって、俺が大人の男になったことをもう一度分からせた方が良いか? そんな自分に都合の良いことを考えていると、澪が突然質問をしてきた。
「妹みたいな存在って言ってましたけど、どこでそれが『好き』に変わったんですか?」
「あーそうだな、それは……澪が入社した時、綺麗な大人の女性に成長してて驚いて固まってしまったんだが……それが原因で澪に『超無愛想』と思われるようになった」
「え!? それが原因であんなに無愛想だったんですか…?」
「あぁ、本当に悪かった。で、その後、澪がフロントの玉井さんと話しているのを聞いちゃったんだよ」
「何をです?」
「新しく彼氏が出来た、っていうのを」
「あー……話してたかもしれません」
「それを聞いた時に、今までとは違う感情が湧き上がった。俺は澪との思い出が大事なものになっていたのに、澪はそうじゃなかったのか?って。
それからはホテルで見かける度に、自然と目で追うようになって、妹じゃなくて女として意識してることに気付いたよ」
澪がボンッと顔を真っ赤にしている。そんなに照れる要素があったか?
「澪、何に照れてるの?」
「すみません、女として意識してたって言われて、つい嬉しくて…」