副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜
「もしもし、副社長、どうしました?」
「いや、直接話した方が早いと思って。あと、呼び方は副社長じゃないだろ? 澪」
澪、と呼ばれた瞬間、息が止まりそうになった。
一気に体温が上昇していくのが分かる。
「……名前呼んだだけで顔真っ赤にされたら、この先身がもたないぞ?」
「えっ 嘘! 顔見えてるんですか?!」
スマホの表示を確認したり、きょろきょろ周りを見回す。見えるはずがないのに、なぜ分かるんだろう。まるで見透かされているようだ。
「あはは、いや、冗談だよ。澪も名前で呼んで? はい、じゃあ練習」
「あ、あす、か、さん…」
「カタコトでロボットみたいじゃないか。はい、もう一度」
「飛鳥さん」
「はい、よく出来ました。じゃあ、澪のお母さんと話したこと、詳しく教えて?」
(副社長ってこんな人だったっけ? というか、急に「倉田さん」から「澪」って距離の詰め方、バグってない…?)
飛鳥さんとの間に流れる、ほのかに甘い雰囲気にうろたえながらも、母と話した内容を共有する。
一年前から付き合っている設定にしたこと、前々から彼氏がいることは伝えていたが本当にいるのかずっと疑われていたことを話した。
「あ、あと、うちは父が亡くなっているので、母は再婚しているんです。再婚した方の名前は北原薫さん、私の弟は倉田蓮と言います。
私と弟は、死別した父の名字のままですね。あと、当日は特に、弟の蓮に気をつけた方が良いです」
「いや、直接話した方が早いと思って。あと、呼び方は副社長じゃないだろ? 澪」
澪、と呼ばれた瞬間、息が止まりそうになった。
一気に体温が上昇していくのが分かる。
「……名前呼んだだけで顔真っ赤にされたら、この先身がもたないぞ?」
「えっ 嘘! 顔見えてるんですか?!」
スマホの表示を確認したり、きょろきょろ周りを見回す。見えるはずがないのに、なぜ分かるんだろう。まるで見透かされているようだ。
「あはは、いや、冗談だよ。澪も名前で呼んで? はい、じゃあ練習」
「あ、あす、か、さん…」
「カタコトでロボットみたいじゃないか。はい、もう一度」
「飛鳥さん」
「はい、よく出来ました。じゃあ、澪のお母さんと話したこと、詳しく教えて?」
(副社長ってこんな人だったっけ? というか、急に「倉田さん」から「澪」って距離の詰め方、バグってない…?)
飛鳥さんとの間に流れる、ほのかに甘い雰囲気にうろたえながらも、母と話した内容を共有する。
一年前から付き合っている設定にしたこと、前々から彼氏がいることは伝えていたが本当にいるのかずっと疑われていたことを話した。
「あ、あと、うちは父が亡くなっているので、母は再婚しているんです。再婚した方の名前は北原薫さん、私の弟は倉田蓮と言います。
私と弟は、死別した父の名字のままですね。あと、当日は特に、弟の蓮に気をつけた方が良いです」