副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜
「え!この間の写真の件ですか?? そんな……」
「澪、大丈夫だ。探偵を雇って写真を撮ったことは裏が取れてる。とはいえ、証言者として澪と竹田にも入ってもらった方が良いかもな」
「私は大丈夫ですよ、同席します。竹田さんは、どうですかね?」
「竹田も、今回の件で澪に迷惑をかけたと思っているだろうから、必ず出席してくれるだろう。
あと、澪のお父さんの事故の件なんだけど……もう17年も経っていて、証拠を揃えて糾弾するのは難しいと思ってる。とはいえ、何も無かったことにするのは癪だ。この間お会いした青木様も呼ぶことはできるか?」
「癌が見つかったばかりとおっしゃってたので治療中かもしれませんが……一度お電話して、協力頂けるか聞いてみますね」
「ありがとう、助かるよ。大成、諸々の証拠写真については、あっちと連絡取れてるか?」
「はい、大丈夫ですよ」
「飛鳥さん、『あっち』って誰のことです?」
「あぁ、協力者がもう1人いるからな。それは役会までのお楽しみ」
「そうなんですね……なんだか、今から緊張してきました。取締役会っていつなんですか?」
「明後日、水曜の14時30分からだよ。澪のシフト調整に関しては、庄司さんにお願いしておくよ。竹田の方はフロントのアシスタントマネージャーに相談するかな。専務派の人間に頼むと、怪しまれるだろうから」
「分かりました、早番で引き継ぎも終わった後なので、調整しやすいと思います。庄司さんとの調整もありがとうございます」
取締役会での段取りを調整して、あっという間にホテルに到着した。自分たちがこれから起こそうとしていることを、水嶋親子や専務派の人間に勘付かれないよう、この3日間は慎重に行動した。
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