副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜
「気をつけた方が良いというのは?」

「とにかく勘が鋭いです。あと、私が母親代わりでずっと面倒を見てきたので、私のことが大好きというか……ちょっとシスコン気がありますね」

「そうか。ずっと面倒を見てくれた姉には、ちゃんと幸せになってほしいよな。変な虫がつかないか、警戒する気持ちも分かる」

「そう、ですかね? 当日はボロが出ないよう、気をつけますね」


このやり取りをした後の2週間は、レストランの場所の確認など、必要最低限のやり取りをしたくらいで、あとはいつも通り仕事をこなす日々だった。

そして、あっという間に約束していた日曜日になった。


***


約束の日曜日。
 
前日の私のシフトはゲストランナーの遅番業務で、夜22時30分に仕事を終えた。帰宅すると23時30分くらいなので、シャワーをさくっと浴びた後は倒れ込むようにして寝た。


今週は日曜と月曜が休みで、珍しく日曜を含んだ連休だ。

飛鳥さんには前日遅番であることを連絡したら、疲れているだろうからと、車で迎えに来てくれることになった。


これまで誰かと付き合っても、自分が甲斐甲斐しく世話をする一方で、エスコートしてもらうことなんてなかった。だからか、なんだか調子が狂う。


「あ、飛鳥さんから連絡だ。もう着いたのかな」
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