副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜
「飛鳥さんがせっかちなのは、やっぱり社長に似たんですかね?」

「倉田さん、いや、澪さん。ぜひ社長ではなく『お義父さん』と呼んで欲しい」

「こら、勝手に距離を縮めるな」

「え〜〜飛鳥くん、こわーい」


父のあまりの変わりように、澪はポカーンとしている。

そう、父は『社長』として話す時は先ほどまでのような威厳があるが、『父親』となると、急に頭のネジが1本抜けたような感じになる。ここ数年でそれが顕著になった。
歳をとって丸くなったのか、まぁ、親バカなのだろう。


「澪、どちらにせよ、両家顔合わせは早くやろう。日程調整、後でできるか?」

「はい、もちろんです。七瀬社長の空き日程を先に教えて頂いた方がいいですよね」

「私はいつでも良いよ。会社の予定は飛鳥が全部対応してくれるだろうから、澪さん家族の顔合わせを最優先で」

「こら、顔合わせは俺も行くし、なんなら俺が主役なんだが。ったく、なんで全部こっちに丸投げしようとしてんだ」

「おぉ…飛鳥くん、やっぱり怖い。荒木君が教えてくれた通りだ」


とまぁ、こんな調子でこの日は幕を閉じた。
まだまだやることは山積みだが、一旦水嶋専務をこの会社から退場させられた。
肩の力が一気に抜けるような気分だった。


***
< 144 / 160 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop