副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜

両家顔合わせ


「飛鳥さん、水嶋専務がこんなに悪事を働いて、マスコミに騒がれたりはしないの?」

「そうだな、その辺は影響が出ないよう大成と鬼頭が手を回した。それにうちは非上場企業だからな。上場企業だと株主数が多くて影響範囲も大きいけど、上場してないから株主もそこまで多くない。
 とはいえ、専務派の人間も一定数いたから、組織は一時的に不安定になるだろうな」

「そうなんですね…」


水嶋専務が懲戒解雇となり、水嶋美子もいつの間にか退職していた。そして、やや専務寄りだった総支配人も退職するらしい。一体どうなるのやら……。

そんなことを考えていると、飛鳥さんが驚くべきことを言い出した。


「あ、澪。コンシェルジュアプリの会社、最近買収したから、転籍したければ可能だぞ?」

「へ…? え〜〜〜〜〜〜!!!?」

「そんなに驚く?」

「だって、こんなに物凄く忙しい中で、いつの間にその話を進めてたんですか…?」


飛鳥さんの事務処理能力が凄いのか、右腕の荒木さんが凄いのか……


「前々からその話は上がっていたんだ。俺としても、ホテルで活躍した人材がそのまま外に行ってしまうのは勿体無いと思ってたし。今後も会社全体の利益になる買収は積極的にやっていくと思う」

「そうなんですね…」


飛鳥さんがこれから抱える従業員数を考えると、目眩がしそうな数だ。でも、飛鳥さんはそんな従業員の、今後のキャリアのことも考えてくれている。

そんなに凄い人が、本当に私の婚約者で良いのだろうか…?
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