副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜

ついびっくりして反応してしまった。
親子で同じような感じなのか……?


「私はフロント勤務だったのですが、夜勤もキツくて……1年くらいで退職してしまったんです。でも、隆之さんの熱烈アプローチに押されて、いつの間にか付き合うようになってました」


ふふ、と微笑む梢さん。歳を重ねてもこうやって互いを思い合っている姿に、憧れの感情を抱いた。


(私もこんな風に、飛鳥さんと一緒に歳を重ねていきたいな…)


「そういえば、澪は飛鳥さんにどんなプロポーズをされたの?」

「えーっと、それは……」

(偽装婚約の提案をされたなんて、言えないよ…!?!)

だらだらと冷や汗が出できそうだった。
私の焦りを察した飛鳥さんが、代わりに口を開いた。


「私がずっと澪さんに片想いしていたことを伝えました。具体的なプロポーズ内容は、2人だけの秘密です」


そう言う飛鳥さんに、若干、母の目がハートになっているような気もするが……


「まぁ、飛鳥さんかっこいいわ。そうね、2人の大事な思い出よね。これから家族になれるなんて、嬉しいわ〜結婚式もとっても楽しみにしてるわね!」

「お母さん、気が早いよ。飛鳥さんも忙しいし、ゆっくり考えようかな」

「澪さん、私も澪さんの晴れ姿、早く見たいよ…?」

「おい、何でうちの父親が早々に涙ぐんでるんだ」


飛鳥さんも「やれやれ」と少し呆れていた。
親たちが前のめりで、当の本人達はあまり焦ってもいないという、不思議なことになっていた。

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