副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜
「そうだと嬉しいな。澪のお父さんにも恥じないよう、絶対に幸せにする。そうだ、澪、これもつけてくれる?」
そう言って飛鳥さんはポケットから小さな箱を取り出し、私の左手薬指に指輪をはめてくれた。ダイヤモンドが夕日に照らされて、キラキラと輝いている。
サイズはぴったりだった。いつの間に測ったのだろう?
「素敵……ありがとうございます。本当に嬉しいです。飛鳥さん、いつの間にサイズ測ったんですか?」
「ん? 澪が寝てる間にこっそり。ぐーぐーぐっすり寝てたから、全然バレなかったよ」
「え、私そんないびきかいてます?!」
「はは、そこか。いや、可愛い寝息だったよ」
「恥ずかしいから、別で寝ようかな……」
「それはダメ」
そう言われた途端、飛鳥さんに「ちゅっ」と口を塞がれた。
***
その後、ホテルに戻ってディナーを堪能し、部屋に戻ってからは買っておいた泡盛を開け、2人で乾杯した。
「ふぅ……泡盛も美味しいですね」
「澪、もうそれくらいにしたら?」
「えーなんでですか? まだ一杯しか飲んでないです」
そう言って、くぴくぴ飲み続ける。
だって、泡盛美味しいんだもん。まだ飲みたい。
「澪は酔うとさらに可愛くなるから、俺も我慢できないし。それに、俺に襲われても記憶無くなっちゃうだろ?」
「襲うって……ふふ」
「ほら、澪、もう酔い始めてるだろ」
実は、少しふわふわし始めていた。にこにこ笑顔を飛鳥さんに向ける。飛鳥さんも優しく微笑み返してくれた。それだけで幸せな気分になった。