副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜
「この間ワイン飲んだ時ほど、まだ酔ってない?」
「うん、まだ大丈夫。飛鳥さんは?」
「俺はまだそんなに飲んでないし、大丈夫。それより澪?」
「はぁい?」
いつの間にか、飛鳥さんの顔が近くにある。
ふわっとお姫様抱っこで抱えられて、優しくベッドに降ろされた。
***
その後、執拗に攻め立てられた私は、ぐったりと横たわっていた。あれだけ動いたというのに彼は涼しい顔をしていて、少し恨めしく思う。
ベッドに腰掛けていた飛鳥さんは、ふと、時計を確認してから私の方を見た。
「澪、誕生日おめでとう」
「え?!」
時計を見ると、24時ぴったりだった。
「6月23日、誕生日だろ?」
「知ってたんですか……?」
「もちろん」
そう、日付が変わって、28歳の誕生日を迎えた。出生時間はもう少し後だけれど、でも一番最初に飛鳥さんに祝ってもらえてとても嬉しい。
「一番最初に祝えて、良かった」
「飛鳥さん、ありがとうございます……」
「来年以降も毎年、盛大にお祝いしよう」
「ふふ、飛鳥さんの誕生日も、ですよ?」
当たり前に、2人でいる未来を話してくれて、それがまた嬉しい。未来に『絶対』なんてことはないけれど、末長く幸せでありますようにと願わずにはいられなかった。
***