副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜

旅行も折り返しとなり、やらなければならないことが頭を掠める。特に引越し作業については、今は考えないようにしたい…と思って頭からかき消した。


「飛鳥さんのびっくりするような提案から始まって、偽装から本当の婚約者に変わって……今でもなんだか信じられません」


場所は違えど、あの時と同じスイートルームにいる。そして、あの時とは全く違う関係性に変わっているのも、『実は夢の中なのかな…?』と思ってしまう。

懐かしむような気持ちになりながら、またコーヒーカップに口をつけた。


「俺は、こうなるイメージだけを持って突き進んだけどな。澪に好いてもらえるかどうか、不安がなかったと言えば嘘になるけど……」

「でも、結局は飛鳥さんの罠に引っかかりました。しかも、甘い罠」

「あぁ、そうだな。俺の罠に引っかかってくれて、良かった。ありがとうな」


そう言って、飛鳥さんはいつもの優しい笑みをこちらに向ける。

この「罠」は、人を陥れるような、誰かが悲しむような罠ではない。どこまでも優しく、甘美な毒牙にかかったような「甘い罠」だった。


「飛鳥さん、大好きです」


突然伝えると、面食らったような顔をしてから甘い雰囲気に変わった。


「澪、朝からもう一回する?」
「ちょ、今、純粋な気持ちを伝えただけなのに! 飛鳥さんのえっち!」
「そんなこと言われたら、普通襲いたくなるよ」
「それは飛鳥さんだけ…! これから、やちむん通りで焼き物も買いに行くから、ダメです!」


ちぇーと子供のようにいじける飛鳥さん。
相変わらず可愛い所があって、つい笑みが溢れてしまう。


これからは「甘い罠」ではなく、ただひたすらに飛鳥さんの「甘い愛」に溺れていくのだろう。
それは今日も、明日も……きっと、ずっと。


fin.

< 160 / 160 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:9

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

婚約破棄された脇役令嬢は、隣国の皇太子の胃袋を掴んで溺愛される

総文字数/90,098

ファンタジー138ページ

第5回ベリーズカフェファンタジー小説大賞エントリー中
表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop