副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜
私が10才の時に父が亡くなり、そのショックで母は病気がちになった。母の看病をしながら、当時7才の弟のご飯を作ったり勉強を見てあげたり、母親代わりに面倒を見てきた。
そのせいか、誰と付き合っても「澪ってお母さんみたい」と言われてしまうのがオチだった。
「澪のお母さんがお見合いをゴリ押ししてたっていう件、もうせっかくだから受けちゃえば?」
「うっ、やっぱりそう思う? でも別れたばっかりで、今は誰とも恋愛したくないし、自由を謳歌したいなぁ」
「澪! 私達、今年で28だよ!あっという間に30代突入しちゃうんだから。もうそんなことも言ってられないよ!」
母は私が18歳の時に再婚して、徐々に元気を取り戻していた。体調を崩していた「空白の8年」に負い目を感じているのか、最近やたらとお見合いを勧めてくる。
「私個人的には焦ってないんだけど……まぁお見合いしてすぐに結婚する訳でもないし、一回くらい行ってみようと思うよ」
「うん! 出会いのチャンスが多いのは、良いことだと思う。お見合いどうだったか、また教えて?」
「はーい」
そう言って、私達は社食を後にした。この会話を副社長に聞かれているとは、全く気が付かずに。
***
そのせいか、誰と付き合っても「澪ってお母さんみたい」と言われてしまうのがオチだった。
「澪のお母さんがお見合いをゴリ押ししてたっていう件、もうせっかくだから受けちゃえば?」
「うっ、やっぱりそう思う? でも別れたばっかりで、今は誰とも恋愛したくないし、自由を謳歌したいなぁ」
「澪! 私達、今年で28だよ!あっという間に30代突入しちゃうんだから。もうそんなことも言ってられないよ!」
母は私が18歳の時に再婚して、徐々に元気を取り戻していた。体調を崩していた「空白の8年」に負い目を感じているのか、最近やたらとお見合いを勧めてくる。
「私個人的には焦ってないんだけど……まぁお見合いしてすぐに結婚する訳でもないし、一回くらい行ってみようと思うよ」
「うん! 出会いのチャンスが多いのは、良いことだと思う。お見合いどうだったか、また教えて?」
「はーい」
そう言って、私達は社食を後にした。この会話を副社長に聞かれているとは、全く気が付かずに。
***