副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜

そうだ、同棲しよう

食事会も無事終わり、飛鳥さんの運転で自宅マンションに向かう。結局、弟の蓮を納得させることはできなかった。

 
「飛鳥さん、今日はありがとうございました。これで当分は、お見合い話もなくなりそうです」

「あぁ、そうだな。それにしても澪のお母さん、本当よく喋ってたな」
 
「すみません…。お恥ずかしい限りです」

「いや、良いんだ。素敵なお母さんだと思う」


飛鳥さんは何かを考えながら話しているようで、少し上の空だ。


「なぁ、澪」
 
「はい」

「蓮くんが『よそよそしい』と言ってたと思うんだが、いっそ一緒に住んでみないか?」

「へ!?」

 
また突拍子もない提案に、驚いて飛鳥さんの顔を二度見する。


「同棲、ですか?」
 
「そうだ。今澪が住んでる家は一旦そのままにして、家賃も俺が払っても良いんだけど」
 
「いえ! それは流石に申し訳ないので、大丈夫です!」
 
「じゃあその他にかかるものは、俺が全部負担するから。俺のマンションで一緒に住まないか?」

 
偽装とはいえ、そこまでする必要はあるのだろうか? そもそも、2人で一つ屋根の下に住んで、何も起こらないだろうか。

でも結局は偽装の関係だし、副社長なら大丈夫か、と根拠のない自信が湧いた。

 
「あの、飛鳥さんにとってご迷惑ではないですか?」
 
「いや、俺はあんまり家にいないし。ホテルに連泊することも多いしな」
 
「そうですよね。でも、一緒に住むことで、よそよそしさは解消されますかね?」
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