副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜

「よし、じゃあ荷物を運び出そうか。あ、冷蔵庫の中身とかは大丈夫?」

「それが、作り置きのおかずがいくつかあって…捨てていこうかなと」

「は!?なんで捨てるんだ。勿体無いじゃないか」

「え、だって持っていっても…」

「いや、俺が食べる」

「え!私の適当作り置きご飯を、ですか?」

「澪の手料理、食べたい」


「…ダメか?」と子犬のような目で見てくる飛鳥さん。そんなに私の手料理、食べたいの…?


「あの、持っていって食べるでも良いですし、もし良ければ明日以降、ご飯も作りますよ? まぁ飛鳥さんは不在のことの方が多いと思いますが……」

「本当か!それは楽しみだ」


子犬がしっぽをブンブンと振って喜んでいるようだ。子犬というか、180cmあるから大型犬というのが正しいか。

私の中の副社長のイメージが、どんどん崩れていく。

 
「じゃあ、この作り置きは後で食べましょうか。あ、ご自宅に食材ってありますか? あと、自宅ってご両親のいる実家、ではないですよね?」


すっかり大事なことを聞き忘れていた。もしかしたら実家住まい、という可能性も否定できない。

 
「あぁ、マンションに一人暮らしだよ。食材はほとんど無いかな…たまに家事代行の人を呼んで、作り置きしてもらったりはするけど。

 自分で料理することはほとんどなくて、基本は会食とか外食が多いな。もう疲れた時は3日連続カップ麺とか……」
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