副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜
「はぁ…水嶋専務、何かしてきますかね? ちょっと怖いです」

「なるべく何も起きないよう、こちらも注意する。嫌な思いをさせてすまない」


頭にポンッと飛鳥さんの手が乗せられる。子供をあやしているようだけど、飛鳥さんの行動にいちいち緊張してしまう。


「いえ、大丈夫です。専務とは滅多に会う機会も無いですしね。明日・明後日は早番で5時起きなので、先にシャワーをお借りして良いですか?

 あ、でもホテルまで随分近くなったので、起きるのも5時半か、6時でも良いかも?」

「近くなったと言っても、それじゃあほとんどご飯を食べる時間がないな」

「そうなんですよ。朝が早すぎて、全然ご飯が胃に入らなくて…」

「それもそうだな。シャワーと言わず、湯船に浸かってくれ。お風呂、入れてくる」

「すみません、ありがとうございます」

 
飛鳥さんの懸念する水嶋専務が、一社員の私にまで何かしてくるのか、全く想像がつかなかった。ただ、水嶋専務の権威とお金への執着は、私の想像を遥かに超えているようだ。

その後、私が手料理した残り物を2人で食べ、湯船に浸かり、借りたベッドでぐっすり眠ることができた。

そして夜が明け、またいつも通りの仕事の日々が始まる。


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