副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜
ーーープルルッ


「はい、客室課 倉田……」
 
「倉田さぁーーん!!! ちょっとぉ、ちゃんとオーダー対応したの!? 1311のゲスト、ランドリーピックアップされてないって、カンカンよぉ!」

「はい? 13階のオーダー、今日受けてませんけど…いつ電話しまし……」

「そんなことは良いから、早く、1311のゲストに謝罪してきて!一刻でも早く!!」


そう言ってブチッと電話を切られてしまった。
ちなみに水嶋さんは、キレると語尾が伸びない。最初からそうであってほしい。
 
フロントから受けたオーダーをメモした用紙を確認するが、今日は13階のオーダーを受けていない。
 

「先輩、どうしました? 水嶋さんからオーダーですか?」

「1311のゲストがランドリーピックアップされてないって、カンカンにキレてるらしい」

「えっ!本当ですか? オーダー用紙見せてください……うわっ今日の早番、ランドリーオーダー多すぎですね。それと先輩、今朝は13階ないですね」

「そうなんだよね、私の書き忘れか、水嶋さんの連絡漏れか……」


(まさか、わざと、なんてことないよね?)


「水嶋さんだったら、機嫌が悪くてわざと電話しない、とかありそうですねー」


そう言って、頬を膨らます平さん。素直に思ったことを口にしても、平さんのキャラなら大体許されてしまう。
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