副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜
「分かった、玉ちゃんごめんね。なんか人伝てに報告する感じになっちゃって」
「ううん、それより澪、これから本当に気をつけてね。相手が副社長ってことは、絶対、水嶋専務に目をつけられるよ。今日はこのホテルに来てるみたいだから、なるべく会わないよう気をつけた方が良い」
「うん、分かった。副社長にも注意されてるから、気をつける」
「あと、他の女性社員も!隠れジュニアのファン、結構多いんだからね〜!」
「うん」
2人で急いでご飯を食べて、業務に戻る。
今朝はランドリーの回収が多かったので、夕方のデリバリーも物凄い量だ。早めに仕上がった服は、早々に客室に届けに行く。
「先輩、マジですみません……今日は量多過ぎて、1人で回りきれる気がしません…」
「うん、大丈夫だよ。私もできるだけ運ぶから。あ、ほら、玉ちゃん早速電話きてるよ」
「くそ〜〜 あ、はい、客室課 平です。1005、アメニティ追加ですね。すぐ行きます」
「私はランドリー行くけど、オーダーもキツかったらこっち回して?」
「倉田先輩、仕事出来すぎです神です……お言葉に甘えて、まずは上いってきます!」
パタパタと出ていった平さんを見届けて、私は大量のランドリーの箱を積み上げる。ハンガーにかかったものも並べると、凄い量だ。
「よし、じゃあ上の階から行きますか」
私もランドリー室を出発した。
スイートルームが並ぶ36階から、ランドリーを配り始める。流石に全フロアを回る訳ではないが、20階あたりで一息ついた。