副社長の甘い罠 〜これって本当に「偽装婚約」なのでしょうか?〜

「あっはっは!副社長、面白過ぎだろ。あ、すみません、ツボに入りました。あと、倉田さんも天然ですか?」

「え、面白かったですか?」

 
荒木さん、笑い過ぎて涙まで出てる。これまでほとんど話したことは無かったが、かなり砕けた人のようだ。

 
「はい。あ、良かったら、副社長と色々話してみてください。倉田さんのシフトのタイミングで、ちゃんと副社長も休みが取れるよう調整しとくんで。
 次に土日休みのタイミングっていつです?」

「えっと、今日から3連勤、1休みのセットが続くので、再来週の土日は連休です」

「分かりました。じゃあ、デート出来ますね。副社長にも伝えておきます。その後はまた出張続きなので、そのタイミングで宜しくお願いします」

「デート……」

「はい、嫌ですか?」

「いえ、飛鳥さん、私とデートって嬉しいんですかね? せっかくの休みなのに」

「嬉しいと思いますよ。まぁ、何はともあれ、まずはよく話してお互いを知るのが肝要かと」

「わかりました、色々と調整もありがとうございます」

 
そうこう話しているうちに、あっという間にマンションに到着した。荒木さんに礼を言う。

 
「荒木さん、ありがとうございました」

「いえ、今日もお疲れ様でした。ではまた」


車が出るのを見届ける。まるで嵐が去った後のようだ。

一人になった途端、どっと疲れが押し寄せてくる。すぐに体を休めようと、マンションに入った。


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